「楽譜を見ていたら鍵盤が分からなくなる。鍵盤を見たら、次の音を見失う」
ピアノを始めたばかりの方から、とてもよく聞く悩みです。楽譜を読めないから自分には向いていないのかな、と感じるかもしれません。でも、これは目と手に一度にたくさんの仕事をさせているだけ。才能の問題じゃないんです。
結論から言うと、楽譜と鍵盤をずっと往復しながら弾こうとしなくて大丈夫です。弾く前に見る場所を小さく決めて、2〜4音だけ鍵盤で確かめる。この繰り返しにすると、目線も手も落ち着きやすくなります。
特に初心者の方は、初めから楽譜をたくさん読もうとすると疲れてしまいます。読めない、手が止まる、また最初からやり直す——この繰り返しが続くと、せっかく「弾いてみたい」と思って始めた気持ちまで小さくなってしまいます。だからこそ最初は、上手に通して弾くことよりも、短い部分を自分で確かめて「ここならできる」と感じる時間を大切にしてください。
楽譜と鍵盤を行き来するときの「目と手の忙しさ」をイメージしてみましょう。
楽譜を見ながら弾けないのは、普通のことです
この図解では、楽譜と鍵盤を何度も行き来すると、目も手も忙しくなる様子を表しています。まずは一度に全部をやろうとしなくて大丈夫です。

初心者さんは、音符が何の音か考え、その音が鍵盤のどこにあるか探し、指番号・リズム・両手の動きまで同時に気にしています。最初から一度にこなそうとしたら、手が止まるのは自然です。
たとえば右手で一音を弾くためにも、
「音符を見る」
「音の高さを考える」
「鍵盤の場所を探す」
「どの指で押すか決める」
という小さな判断があります。そこに拍の長さや左手まで重なると、頭の中がいっぱいになるのは当然です。止まるのは、できていないのではなく、今どの作業が多すぎるのかを教えてくれるサインです。
私がレッスンで大切にしているのは、楽譜を見続けることではありません。見る→鍵盤で確かめる→少し弾く、という短い往復を作ることです。最初から1曲を止まらずに読んで弾こうとしなくて大丈夫です。今弾く小さなまとまりだけに目を向け、2〜4音で一度止まって確認してから先へ進みます。確認して弾けた経験を重ねるほど、楽譜と鍵盤の往復は少しずつ短くなっていきます。
結論:一音ずつではなく、短いまとまりで準備します
楽譜を見る時間と鍵盤を見る時間を分けて考えるのがポイントです。目線を同時に二か所へ置こうとせず、短いまとまりを見てから鍵盤へ移す順番を作りましょう。

楽譜を一音見て、鍵盤を一音探して、また次の音符を見る。この方法では目線がずっと忙しくなります。そこで、最初の2〜4音だけを先に見ます。全部を覚える必要はありません。次の短いまとまりを見てから弾く、を繰り返せば大丈夫です。音名を暗記するよりも、音が同じ高さで続くのか、右へ進むのか、左へ戻るのかを先に確かめましょう。鍵盤に触る前に動きの方向が分かるだけで、探す時間をぐっと減らせます。
目線が迷わない3つのコツ
ここでは、楽譜と鍵盤を見失いにくくするための順番を3つに分けて紹介します。すべてを一度に完璧にしようとせず、まずは「出発点を決める」「短いまとまりを見る」「止まった場所だけ戻る」の順で、目線の仕事を小さくしていきましょう。
1. 弾く前に、最初の音だけを鍵盤で見つけます
最初に全部の音を読もうとしないでください。最初の音がどこかだけを、先に鍵盤で確認します。ドレミが書いてある楽譜なら、黒鍵が2本並んだ場所の左にある白鍵がドです。出発点が決まると、その後の音は上がる・下がる・同じ音として追いやすくなります。音名をすぐ言えなくても、「ひとつ右」「同じ場所」「ふたつ左」という動きで追えれば十分です。まずは出発点を迷わず見つけられることを目標にしましょう。
自分なりの規則性、法則みたいなものを見つけられると、弾くことも読むことも少しずつ早くなりますよ。
2. 2〜4音を見てから、鍵盤へ目を移します
次に、楽譜の最初の2〜4音を目で追います。音名を完璧に言えることより、同じ高さが続くか、少し上がるか、少し下がるか、途中で大きく飛ぶかをつかむことが大切です。迷いやすい場所だけを先に見る。この順番なら、楽譜は難しいものではなく、次にすることを教えてくれる地図になります。最初は2音でも構いません。「ドからレへ隣に進む」のように、鍵盤での動きを一つだけ予想してから弾いてみてください。
3. 止まったら、前の2音まで戻ります
止まった場所だけを直すと、練習の流れが切れにくくなります。

途中で分からなくなると最初まで戻りたくなりますが、毎回最初からやり直すと止まった場所を通るたびに緊張しやすくなります。止まったら、前の2音だけを楽譜で確認してください。その前の2音から止まった音までをゆっくりつなげて、つながったら先を2〜4音だけ足します。戻る場所を決めておくと、「また最初からだ」と焦らずに済みます。前の2音からつなげ直せたら、その先は一音だけ足せば十分です。できた部分まで戻る練習は遠回りに見えて、止まりやすい場所を一番早くほどく方法です。
今日の5分練習は、これだけで十分です
今日は、ドレミが書かれたやさしい楽譜を1つ用意してください。知っている童謡の最初の1行で大丈夫です。
最初の音を鍵盤で見つける。
2〜4音の動きを楽譜で見る。
鍵盤を見て、その短いまとまりだけ弾く。
次の2〜4音を見て、同じように進める。
この順番だけ試してみましょう。練習時間が短い日は、「分かるところを一度弾く」だけで終わっても構いません。なんとなく最後まで通すのではなく、止まりそうな2〜4音を一か所選ぶと、練習の終わりに「今日はここが分かった」とちょっとした達成感を積み上げられます。
目標は、楽譜を見ながら1曲を弾き切ることではありません。最初の4音を、自分で見て弾けたを作ることです。ドレミ付き無料楽譜6曲なら、最初の音と短いまとまりを確認しながら始められます。楽譜がなくてもピアノを楽しむためのプレミアム動画も一緒に用意しています。
それでも目線が忙しいときの調整方法
目線が落ち着かない原因は、人によって違います。音符の高さが気になる方もいれば、両手の動きが重なった途端に見失う方もいます。うまくいかないときは練習量を増やす前に、いったん仕事を一つ減らすことから試してみましょう。
片手だけにして大丈夫です
両手を弾きながら楽譜を見るのが難しいなら、右手だけに戻ってください。片手でスラスラ弾けるようになってから、左手を一音だけ加えれば十分です。両手という別の難しさが重なっているだけなので、ひとつずつ分けると迷う場所が見えやすくなります。右手だけで2〜4音を落ち着いて弾けるようになれば、左手はあとから足せます。左手を加えるときも、最初は一音を長く伸ばすだけで大丈夫。両手を同じ難しさで同時に仕上げようとしないほうが、楽譜を見る余裕を残せます。
難しいところからチャレンジではなく、できるところから片付けていくイメージです。これだったら進めていけそうじゃないですか。
楽譜を1行だけ見えるようにします
ページ全体に音符がたくさんあると、次の段や小節まで気になってしまうことがあります。紙を一枚置いて、今練習する1行だけが見えるようにするのもおすすめです。これは隠すためではなく、目線の仕事を減らすための工夫です。紙を置くときは、1行の中でも次に弾く2〜4音だけが見えるようにしてみてください。視界がすっきりすると、先の音符に気を取られず、今の手の動きへ集中しやすくなります。
楽譜は、全部を一度に読めるようになるためのものではありません
最初の音を見つける。数音の方向を見る。迷ったら前の2音へ戻る。この3つで、楽譜を見ながら弾く時間は少しずつ作れます。
楽譜を見ながら弾く力は、止まらずに弾く練習だけで身につくものではありません。「見て、確かめて、少し弾く」という小さな成功を繰り返す中で、目と手の役割が少しずつ分かれていきます。
ピアノは、楽譜を完璧に読める人だけのものではありません。今日の短いまとまりを一つだけ見つけて、自分の手で鳴らすところから、好きな曲へ近づいていきましょう。
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プロフィール
元ヤマハシステム講師として10年・現在もオンライン講師として活動中/ピアノ指導歴17年・累計500名以上を指導。楽譜を読むことに苦しまず、一人ひとりが自分のペースで好きな曲を楽しめるよう、初心者向けの動画や楽譜を届けています。
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